ラーメン構造の躯体工事にかかせない構造スリット。
このスリットのおかげで地震時に構造体へのダメージが緩和できている。
その役目と納まりを解説してきます。
柱・梁で建物を支える構造。
構造スリットの役目
構造スリットは、構造計算に算入されていない雑壁と構造体である柱・梁(スラブ)と縁を切るために用いられる資材である。
雑壁で柱・梁(スラブ)を拘束してしまうと、地震時に柱・梁(スラブ)に甚大な被害が起きてしまいます。
その被害が阪神淡路大震災で顕著に出ているのです。(詳しくは最後のおまけで解説しています)
被害を防ぐために構造体から縁を切ることが大事!
構造体は建物の要だから、極力ダメージを軽減したいんだ。
構造スリットの有無での柱の被害状況
ちなみにスリットの有無で地震時に柱の壊れ方が異なります。
せん断破壊と曲げ降伏の2種類あり、せん断破壊は一番まずい壊れ方をします。
2種類について詳しく解説していきます。
部材が破断し、元に戻らない状態。
もろい壊れ方をする。
柱がせん断破壊してしまうと柱が倒壊するおそれがあるため、かなり危険な状態になります。
柱に雑壁がついている、スリットがない状態のときになりやすい壊れ方です。
また腰壁・垂れ壁があると接している部分は拘束されてしまうため、壁と柱が触れてない部分が実質の柱としての作用をします。
このように拘束された柱を短柱と呼びます。
部材がゆがんだことにより、部材端部にひび割れが起きている状態。
このとき靭性(脆性破壊に対する抵抗・変形性能)はある。
スリットの種類
そして構造スリットは大きく2つに分けられ、役割があります。
●垂直スリット・・・雑壁と柱と縁を切る
構造スリットの納まりと取付方法
上記画像が必要資材になります。
垂直スリットの納まりと取付方法
垂直スリットの納まり図になります。
取付方法としては、
①垂直スリットは柱と雑壁の境目に入れます。
注意点としては、柱内に垂直スリットが入らないようにすることです。(柱が断面欠損にならないようにするため)
再生ブチル(止水材)がある方を外部側に向けて取付けます。
②取付けたら、垂直スリットの高さ方向400mmピッチ(端部は200mmピッチ)に振れ止め筋を入れていきます。
③また雑壁側の振れ止め筋には、振れ止め筋に直接コンクリートが付着しないように、カバーを付けます。
④最後にコンクリート打設時に垂直スリットが動かないようにするために、専用の金具を使用して固定します。
専用の金具は垂直スリットとセパレーターに付けます。
水平スリットの納まりと取付方法
妻側に取付ける水平スリットの納まり図です。
建物の短辺方向の壁
おまけ 構造スリットができた理由
1995年に起こった阪神淡路大震災で建物倒壊の被害が、かなり出てしまいました。
大地震時の死因の8割が倒壊による圧死だったのです。
つまり建物の要である柱が折れてしまったのです。
特に腰壁・垂れ壁に接していた柱が短柱となり、柱がせん断破壊を起こしました。
これでは安心して暮らせないよね。
この教訓から柱などの構造体を損傷させないために、構造スリットが誕生したのです。
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